概要
おれおちゃん、まず簡単に延喜式ってなんだろう?
延喜式は神社に関する歴史書としてもっとも古いものなんだけど、実際は平安時代の法律書なんだ。ガオ
延喜式(えんぎしき)は様々な神社の社史に引用される歴史書で、正式には平安時代中期の法律書です。平安時代中期に編纂された格式で、三代格式の1つとされるもの。格式とは、律令(法律)の施行細則(細かい決まり)のことで、簡単に言えばメインの律令を補足する内容の法律や規則を記載したルールブックのことです。三大格式と言われるが、ほぼ完全な形で残っているのは延喜式だけであり、細目まで規定されているために古代史研究で重要な文献となっているそうです。
歴史
905年(延喜5年) に醍醐天皇に、藤原時平ほか11名の委員たちが編纂を命じられて着手しました。。ちなみに延喜5年は最初の勅撰集である古今和歌集の編纂が開始された年でもあり、この時期に国家体系をまとめる上で様々な記録を残していったことが見受けられます。時平の死後は藤原忠平が引き継いで編纂し、延喜式は927年(延長5年)に完成、その後改訂が何度か行われて967年(康保4年)に施行されました。
延喜式神名帳
全50巻、約3300条からなる法律であり、このうち9巻と10巻が神名帳(じんみょうちょう)と呼ばれており、この部分を指して、延喜式神名帳と呼ばれています。神社に関する最も古い文献として正統性も高いため、各所でよく言及されています。神社と法律書である延喜式との関係性は、古来神社は神事が行われる場所であり、政治が”まつりごと”と呼ばれるように、神道と政治が一体不可分のものだったためです。
神社なのになんで法律?って思うかもしれないけど、古代の昔はリーダーである天皇の正統性が神にあったから、神を司る神社は立派な国を統治する手段だったから法律だったと言えるみたい
延喜式神名帳に記載された神社は、「延喜式の内に記載された神社」ということで、延喜式内社、または単に式内社(しきないしゃ)とか式社(しきしゃ)と呼ばれています。OLELOGでも社格の1つとして紹介している分け方です。
神名帳に記載された神社(式内社)は全国2861社であり、そこに鎮座する神の数は3132柱にもなるそうです。端的に言えば式内社となることは当時は官社に指定されていた全国の神社の一覧を指すので、神社にとってとても高いステータスの証明となります。官社とは官幣社とも呼ばれ、官(=朝廷や国)から幣帛(へいはく)または幣帛料を支給された神社を意味します。延喜式の祝詞の条に規定される幣帛の品目は、布帛(ふはく:入もの)、衣服、武具、神酒、新撰(しんせん:神社や神棚に供えるもの)などがあります。
つまり、延喜式神名帳に記載された式内社は、国のお墨付きをもらった(公費で奉納されるものがあった)ということからステータス(社格)につながっていくんだ。現在の社会で一般的な政教分離とは全く逆をいくもので、神道が国家の基盤となっていたといえる。ガオ
延喜式成立時にすでに存在していたが神名帳に記載がない神社を式外社(しきげしゃ)といいます。厳密には、いわゆる六国史(日本書紀、続日本紀、日本後紀、続日本後紀、文徳実録、三代実録)に記載されているが式内社として延喜式に記載がない神社です。そこには朝廷の勢力外にあった神社や独自の勢力を持った神社、また神仏習合によって仏を祀る寺に変貌した神社、僧侶が管理した神社、正式な社殿がなかった神社などが含まれており、裏を返せば式内社の選定には政治的なバックグランドが潜んでいる部分は否定できません。
主な式外社は、北野天満宮(京都)、八坂神社(京都)、石清水八幡宮(京都)、熊野那智大社(和歌山)、高千穂神社(宮崎)など、有名な神社がたくさんあるので、式外社=格式が低い神社というわけではないことに留意しましょう。
式内社の区分
延喜式神名帳に記載された式内社の神社に対して、様々なクラス分けが出来ます。
①官幣社&国幣社
式内社=官社であり、これは上述の通り国から幣帛や幣帛料をうける神社のことでした。中でも、神祇官(朝廷の祭祀を司る現在の省庁にあたる組織)から各神社の祝部(ほうりべ、はふりべ)が幣帛を受けるようになった神社を官幣社(かんぺいしゃ)、国司から受けたのを国幣社(こくへいしゃ)として分けることができます。ちなみに、官幣社が573社、国幣社が2288社と圧倒的に国幣社が多いです。国幣社が出来たのは地方では中央から派遣することが困難だったためと思われているようですが、重要な神社は地方でも官幣社となっているものがあるため、この分け方で言えば、当時の朝廷がどれほどその神社を重視していたかを示す指標となりそうです
②大社&小社
これはシンプルに神社の重要度やその神社の他とのパワーバランスによったと考えられている分け方です。
よってこの2軸により、以下4つの種別に式内社を分けることができます。
分け方 | 数 | 意味 | エリア |
官幣大社(かんぺいたいしゃ) | 198社 | 朝廷から直接奉納を受け得ており、最も重要度の高い神社 | ほぼ近畿 |
国幣大社(こくへいたいしゃ) | 155社 | 朝廷の代わりに国司から奉納を受ける、規模の大きな神社 | 近畿以外 |
官幣小社(かんぺいしょうしゃ) | 375社 | 朝廷から直接奉納を受けるが官幣大社ほどの規模ではない神社 | すべて近畿 |
国幣小社(こくへいしょうしゃ) | 2133社 | 国司から奉納を受ける、式内社の中では比較的規模の小さな神社 | 近畿以外 |
なお、こうしたカテゴリとは別に、式内社の中には特別に幣帛を受ける神社があり、例えば名神祭(特に霊験あらたかな名神を祀る祭)において幣帛をうけるのが”名神”とされ、これらは名神大社(みょうじんたいしゃ)と呼ばれています。
式内社としてカテゴライズされていながら、現在では消滅したり(名称変更などで)不明となっている神社が多いのも事実であり、現時点で神名帳に掲載された神社と同一もしくはその後継とされる神社は論社(ろんしゃ)と呼ばれます。延喜式編纂以降、社名や祭神、鎮座の地が変更されたり、一度荒廃してから復興された場合などのケースは論社にあたります。
Reference
・東京国立博物館(延喜式写真)https://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl&colid=B2370&t=type&id=24
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